ニュースの概要
米国の小型原子炉メーカーであるNuScale Powerが、韓国の重電大手Doosan Enerbilityと、自社の小型モジュール炉(SMR)に使う上部の原子炉圧力容器モジュールを製造する契約を結んだ。NuScaleは、米原子力規制委員会(NRC)から設計認証を受けた唯一のSMR設計を持つ。今回の契約で、同社の炉は紙の上の設計から、鉄を削り溶接する製造の段階へ進む。両社は2019年から協力しており、今回は初号機向けの部材が対象となる。発表後、NuScaleの株価は上昇した。市場は、認証取得という「許可」に加え、実際に造れる体制が見えたことを評価したとみられる。
引用元: NuScale、Doosan EnerbilityとSMR部材の製造契約を締結(Ground News)
分析・見解
設計認証から鉄の製造へ、節目が変わった意味
SMRの話題は長く、設計がどれだけ優れているかが中心だった。NRCの設計認証は、その設計が安全審査を通ったという証明である。ただし認証は図面への評価であり、炉が動く保証ではない。今回の契約は、図面を実物にする最初の大きな発注にあたる。圧力容器は炉の中心部を包む鋼鉄の容器で、原子炉の中でもとりわけ製造が難しい部材だ。ここに発注が出たことで、事業の重心が審査から製造へ移ったと読める。
斗山が選ばれた理由は、大型鍛造の実績にある
圧力容器の製造には、巨大な鋼塊を鍛える設備と、厳しい品質管理の経験が要る。世界でこれを担える企業は多くない。斗山は韓国内外で大型炉の主要機器を造ってきた。2019年から続く協力関係もあり、設計側の要求を製造側が早くから理解している点が強みになる。新興企業が自前で工場を建てれば、数年と巨額の資金が要る。既存の重電メーカーに任せる選択は、時間とリスクを減らす現実的な手だ。
量産効果は、まだ約束された未来にすぎない
SMRの売りは、工場で同じ部品を繰り返し造ってコストを下げることだ。造船や航空機と同じ発想である。しかし初号機は一品物に近く、費用は高くなりやすい。米国で先行したSMR計画が、費用の膨らみを理由に中止された例もある。つまり今回の契約は、安く造れる証拠ではなく、安く造るための学習を始める合図だ。何基目から単価が下がるのかが、次に問われる。
米韓の分業が、サプライチェーンの型を変える
設計は米国、重い部材は韓国という分業は、今後のSMR産業の一つの型になりうる。米国内には大型鍛造の能力が限られているため、同盟国の製造力を借りる形が合理的だからだ。一方で、特定の国と企業への依存という弱点も生まれる。納期の遅れや為替の変動が、そのまま事業全体に響く。強みと弱みが同時に増える構図である。
ビジネスへの影響
調達担当は、部材ごとの供給元を早めに確認する
電力会社や産業用の大口需要家が将来SMRを検討するなら、設計の優劣より先に、誰がどこで部材を造るかを確かめたい。圧力容器のような重い部材は、発注から納入まで数年かかる。製造枠は先に埋まるため、契約の順番が稼働時期を左右する。複数社から見積もりを取り、納期の根拠となる工程表を求めるのが基本だ。
投資家は株価より、工程の進み具合を見る
契約発表で株価が上がるのは自然な反応である。ただし発表と収益化の間には、製造、輸送、据え付け、試験という長い道のりがある。見るべきは、初号機部材の完成時期、検査の合格状況、費用の見直し幅だ。四半期ごとの進捗が計画からずれていないかを追えば、期待先行かどうかを判断しやすい。
周辺企業にも商機と備えが生まれる
溶接、非破壊検査、特殊鋼、輸送といった周辺の中堅企業は、品質認証さえ整えば参入の余地がある。原子力向けの品質基準は厳しく、取得に時間がかかる。受注の可能性を感じるなら、早めに認証の準備を始めるべきだ。逆に、調達先を一国に絞る企業は、為替や地政学の変動に備えて代替先を持っておきたい。
