ニュースの概要
ロールス・ロイスSMRは、ハンガリーを優先市場と位置づけ、2022年から政府、エネルギー企業、原子力規制当局と導入の協議を重ねてきたと報じられた。すでに40社を超える現地企業に接触し、一部は事前審査や見積もりの手続きに進んでいる。提案の中心は、実績のある加圧水型炉を土台にした470MW級の原子炉である。「小型」と呼ばれる区分のなかでは最小クラスではなく、中型のモジュール炉に近い。工場でのシリーズ生産によって、建設の期間と費用を抑える狙いがある。報道は、同社が炉そのものの売り込みだけでなく、部品を作る国内産業の巻き込みまで同時に進めている点を伝えている。
引用元: ロールス・ロイスSMR、ハンガリーでの原子力発電所建設を提案(Infostart.hu)
分析・見解
470MW級は本当に小型か、数字で見ると中型に近い
SMRは「小型モジュール炉」の略で、一般に出力が300MW以下の原子炉を指すことが多い。今回の470MW級は、この線引きを超える。日本の大型炉が1,000MW超であることと比べれば小さいが、実態は中型炉に近い。名前に引きずられず、数字で見ると位置づけがはっきりする。
小型にこだわらない選択には理由がある。出力が小さいほど、1MWあたりの建設費は割高になる。規模の利益が働かないからだ。470MW級にすれば、工場で作る利点を保ちつつ、発電単価を下げやすい。大型炉は1基で数兆円規模になることも多く、資金調達の負担が重い。その点でも中型は現実的な落としどころになる。加えて、実績のある加圧水型炉(=世界の原発で最も多い方式)を土台にするため、規制当局も審査の前例を使いやすい。
2022年から続く地道な協議が、受注の土台になる
原子炉の受注は、価格表を示して決まるものではない。ハンガリーでは、政府、電力会社、規制当局の三者と4年近く話し合いを重ねてきたという。この長さが重要である。原発は一度建てれば60年ほど使う。相手国は炉の性能だけでなく、供給元が数十年先まで責任を持つかを見ている。日本でも、海外炉の採用には安全審査の積み重ねが数年単位で必要だった。早い時期に腰を据える姿勢そのものが、信頼の証拠になる。
40社超への接触は、炉を売る前の地ならしになる
現地企業に事前審査や見積もりを求める動きは、単なる部品の調達調査ではない。国内で仕事が生まれると見せることで、政治的な支持を集める効果がある。原発計画は、地元に雇用が落ちるかどうかで世論が変わりやすい。原発の輸出では、現地調達率を約束する手法が定番でもある。また、現地企業が品質認証を取るには数年かかる。早く着手するほど、実際の建設で遅れが出にくい。ここに、日本の部品メーカーが組み込まれる余地も見える。
ロシア型炉が中心の国に、西側の別案が名乗りを上げた
ハンガリーのパクシュ原発はロシア型の炉で動き、増設もロシア企業が担う。そこへ英国の企業が現れたことは、エネルギー安全保障の選択肢が増えることを意味する。ただし提案が実現する保証はない。資金、規制審査、最初の1基を建てる実績という三つの壁が残る。SMRは、まだ世界で商業運転の実績が乏しい。最初の1基の遅れが、後続の評価を左右する。
ビジネスへの影響
日本の製造業が学べる、売り込みより先の関係づくり
受注の前から現地企業を巻き込む手法は、海外展開を考える部品・素材メーカーにも当てはまる。製品が優れていても、現地の認証や取引実績がなければ、採用の土俵に上がれない。まず相手国の発注者と継続的に話し、見積もりや審査に参加して学ぶ。これが後の受注率を左右する。SMRの供給網に入りたい企業は、溶接、鍛造、制御機器、品質保証の分野で、海外炉メーカーの調達窓口を確認しておくとよい。国内メーカーが海外炉の部材を手がけた例もあり、実績づくりの道筋はある。
電力会社と自治体が、いま確認しておきたい三つの点
第一に、炉の出力と立地条件の相性である。470MW級は小型炉より敷地や冷却水を多く必要とする。第二に、資金の組み方である。工場生産で単価が下がる前提は、複数基を発注して初めて成り立つ。1基だけでは安くならない。第三に、住民との対話の時期である。計画が決まってから説明するのでは遅い。ハンガリーのように地元企業へ仕事が生まれる姿を早く示せば、理解が進みやすい。
投資や調達で見るべきは、最初の1基の進み具合
投資家や調達担当者は、発表された提案数より、最初の1基の工程表を追うべきだ。許認可の取得日、主要機器の製造開始、現地企業の認証完了。この三つが予定どおり進めば、後続の案件も現実味を帯びる。許認可から運転開始までは、通常、数年から十年単位かかる。逆に遅れが続けば、シリーズ生産による費用削減の前提が崩れる。四半期ごとに進み具合を点検する仕組みを、社内に作っておきたい。
